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第四十三話 九時〇〇分

Author: 海野雫
last update publish date: 2026-08-13 19:09:15

 朝九時、Onlyé for youの先行予約が始まった。

 澪は胸の前で手を組んで、祈るように受注システムを見ていた。

 スマホを開くと、タイムラインが流れるように動いていた。

『自分の肌に合わせてセミオーダーできる化粧品なんて、神!』

『こんな商品を待ってました!』

『市販の化粧品が肌に合わずに困っていました』

『大阪の催事のデモンストレーションで作ってもらいましたが、とてもよかったので絶対買いたい!』

 けれど、それが実際の注文につながるかは、蓋を開けてみないとわからない。

 澪の心臓は今にも口から飛び出しそうなほど、どきどきと音を立てていた。

 まだ注文が入らない。

 このまま先行予約が入らなかったらどうしよう。

 澪はぎゅっと目をつぶった。

 目を開けると九時〇一分だった。まだ予約開始から一分しか経っていない。

 そのとき、最初の注文が入った。

「あっ!」

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     三日。 澪は上司のデスクの前で、その数字を胸のなかでくり返した。 ――たった三日、じゃない。 回答期限を思えば、プレゼンの場をもらえただけでも上出来なのだ。三日もあれば、やれることはいくらでもある。 澪は、背筋を伸ばした。「ありがとうございます。三日後、皆さんに納得していただけるプレゼンを準備します」 それまで厳しかった上司の表情が、ふっとゆるんだ。「……反対しておいて、なんだけど。あなたのプレゼンが、私の心配を吹き飛ばしてくれることを願っているわ」 澪は深く頭を下げて、上司のデスクを離れた。 自席に戻ると、澪はさっそくプレゼン資料に取りかかった。 上層部、人事、コンプライアンス。立場のちがう全員を、三日で納得させなければならない。 集中していると、時間の感覚がなくなる。気づけば、窓の外はすっかり暗くなっていた。 ――お昼、食べそこねちゃった……。 そう気づいたとたん、急におなかが空いてきた。「あれ? 澪ちゃん、まだ仕事?」 帰り支度を済ませた奈央が、澪の席の横で足を止めた。「はい。例の件で、三日後にプレゼンすることになって……」「そっか。じゃあ、手伝おうか?」「いえ、大丈夫です。奈央さん、これから帰るところですよね?」「いいの、いいの。どうせ食事に誘われてただけだし。あ、そうだ。ついでにテイクアウト買ってきてもらおうっと」 奈央はそう言うと、スマホを手にオフィスを出ていった。 食事に誘ってくれた相手を、買い出し係にするなんて。いかにも奈央らしい。澪は思わず、ふふ、と笑った。 しばらくして戻ってきた奈央は、澪の肩をぽんと叩いた。「会議室でやろうか。あとから誰か来ると思うから」「来るって……誰がですか?」「来てのお楽しみ」

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  • 婚約破棄されたあとに再会した幼なじみからの溺愛が止まりません   第121話 善意の刃

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